現代のぶた事情

○豚と食文化

 豚は世界各国で飼育されていますが、その品種や飼育法はその国独自の食文化と密接に関係しています。それに伴い、同じ品種であっても育種方向が異なるため、外見では全く異なる豚になってしまうことがあります。一例として、日本とアメリカの豚を考えてみましょう。繊細な味付けを誇る日本料理に慣れ親しんできた日本人は、基本的に素材の味に敏感で、食肉の場合、まず精肉の美味しさを重要視します。サイボクのゴールデンポークやスーパーゴールデンポークのように適度に脂肪がのり、柔らかく、ジューシーな豚肉を好むのです。それゆえ、豚にもその志向が反映され、適度に脂肪がのったゆったりとした体型になります。アメリカのハンプシャー一方、アメリカでは国民の極端な健康志向(脂肪を嫌う)から、豚の脂肪を究極まで削る方向で育種が行われ、なおかつ生産効率を考慮し、90kgでお肉にしてしまいます。これでは、豚肉の美味しさが生かされません。やはり、日本の食文化にあった豚肉は国産の豚肉ということになるのではないでしょうか。
 では、ハム・ソーセージといった加工品の利用が主流となっているヨーロッパではどうでしょうか。ドイツを例に挙げると、店頭には精肉は並んでいますが、あまり美味しそうなものは見あたりません。ドイツでは、ピエトレンという豚が利用されています。この豚の特徴は筋肉質で赤身が多いことですが、反面肉質が悪くなるという欠点を持っています。それゆえ、日本の精肉志向にそぐわないことから日本ではほとんど飼育されていません。原料となる肉の質は、あまり高いとはいえませんが、それでも美味しいハム・ソーセージを作り出すのですから、加工技術は極めて高いとえるでしょう。
パルマハム チーズの生産が盛んなイタリア・スイスでは、チーズ工場に養豚場が隣接しているケースが多く見受けられます。これは、チーズ生産の過程で副産物として出るホエイを飼料として利用しているからです。チーズ工場から直接パイプをつないでホエイを導入し、足りない栄養成分を加えて豚に与えるのです。飼料はどろどろの液状になっているため、「食べる」というよりも「飲む」という表現がピッタリといえるでしょう。そのイタリアは、生ハムのプロシュットが有名ですが、その独特の高貴な風味はやはりホエイに由来しているのではないでしょうか。
 スペインでは、同じ国内でも養豚の経営形態が北部と南部では大きく異なります。北部では、改良品種を近代的な施設で飼育する養豚場が多いのに対し、南部では在来種のイベリア豚を放牧中心で肥育する伝統的な粗放経営が残っています。南部スペインは広大なカシ林を保有しており、これから生産されるコルクはスペインの重要な生産物となっていますが、このカシの木になるドングリを主要な飼料として豚を肥育するのです。これから生産される生ハムが有名なハモン・セラーノです。その野趣溢れる風味は、ドングリを腹一杯食べた豚から生み出されるのです。

目次総合大学
日本養豚の歴史サイボクの歴史現代の豚事情
世界のぶたの頭数世界のぶたの品種|ぶたと食文化|

Copyright(C)2000株式会社埼玉種畜牧場
Maintained by "Pig Museum Steering Committee"